装光妖精ルクスルナ最終話 シェイ(空間収束)

  氷漬けとなったルクスルナとともにシェイが現れた空間。

 そこは全てが闇だった。

 視界の一部が闇なのではない。本当に闇しかないのだ。

 そこでシェイは不機嫌そうに顔をしかめた。


「シャドウと、あの女のにおいがする……」


 ここは、別のライフマテリアと装光妖精が戦っていた場所。

 この世のものではない場所。

 もっとも、シェイにとってそんな理屈はどうでもよかった。


「ルナ」


 少女は自分の持つ人形で遊びたいので。誰にも邪魔されず、ずっとずっと。

 シェイが炎を出して、ルナの氷の一部を溶かした。

 クリトリスや割れ目が剥き出しの股間部分、乳首が露わになった胸。

 そして、愛おしい顔。


「ひ……ああ……」


 快感火炙りのショックが抜けていないのか、ルクスルナは舌を突き出したまま呻きを上げるだけ。

 

「ふふ。起きて」


 シェイはルクスルナのだらしなく伸びた舌に、自分の舌を重ねた。

 上部をこすり押しつぶす。ざらざらとした舌が、ルクスルナの桃色の舌を撫でる。

 次第に2つの舌は唾液という糸で結ばれていく。

 そしてシェイはルクスルナの舌裏に、自分の舌で目覚めのキスをした。


「はぅぅぅぅん!?」


 びくり、とルクスルナが震えた。

 腰を抜かすほどの衝撃で、逆にルクスルナの意識は目覚めたのだ。


「く……シェイ……!」

「おはよう、ルナ。お寝坊さん」


 いくらルクスルナが暴れようとしても、一部を残して氷漬けにされた身体は動かない。

 シェイがルクスルナを起こしたのは、ただ彼女の嬌声を聞くためだけ。

 それがシェイの心を満たすのだから。



 ぽう、とシェイの指先でピンク色の球ができる。大きさはパチンコ玉ほどのサイズしかない。


「さっきの、炎……?」


 ルクスルナがゴクリと唾を飲んだ。

 快楽神経を焼き焦がす炎。さきほどはそれで敗北失神絶頂まで追い詰められたのだ。

 また恐怖がルクスルナの身体をかけめぐる。

 しかしシェイはルクスルナの言葉を否定した。


「ううん、あんなおもちゃより、もっと激しくて、気持ちいいもの」


 信じられない言葉だった。

 ただでさえルクスルナが耐えられなかった快楽炎を、玩具呼ばわりするほど激しいという言葉。

 ハッタリには思えなかった。

 だから、ガチガチとルクスルナの歯が鳴った。


「今、教えてあげるね?」

「や、やめ……」


 ピンクの球が、ルクスルナの左の乳首に触れた。


「かはぁぁぁぁぁぁ!!? ひぃぎぃぃぃぃぃ!!」


 一瞬。たった一瞬触れただけで、ルクスルナの蜜壺はイキ潮を激しく撒き散らして身体の屈服を知らせる。

 小便も、スコールを思わせる勢いで激しく、絶え間なく流れ出る。

 氷で拘束されていなければ、身体全体はむちゃくちゃに暴れまわっていたことだろう。

 当然、舌は限界まで外に伸び切り、涎はだらだらと零れ落ちて、ボタボタと闇に垂れる。

 涙が際限なく流れ出る瞳の上では、眉が八の字に曲がっていた。

 一瞬でルクスルナの身体は、完全屈服を表現していた。


「私の本当の能力。空間制御。この場に集まった”気持ちいい”を一か所に集めたの」


 この空間では、別のライフマテリアと装光妖精の戦いがあった。

 その戦いの中でその装光妖精は何度も何度も、それこそ一度は心身が壊れるまでイキ続けた。

 ルクスルナの介入によってその装光妖精は勝利を収めたものの、この空間には彼女が受けた快楽が全て残っているのだ。

 それを一か所に集めたのが今シェイの指先にあるピンク玉ということ。

 つまり、装光妖精1人の心身を破壊するほどの快楽の塊をルクスルナは乳首に受けたのだ。


「えい」


 今度は、未だ黄金水の噴水を垂れ流す尿道に魔の快楽球が触れた。

 シェイの言ったこの場の快楽が全て集まるそれはルクスルナの自身のものもプラスされることを意味していた。


「はぎゃあああああああああああ!! むりむりむりむりぃ!! ごわれりゅぅぅぅ!! ごめんなさいぃぃぃごめんなさいぃぃぃ!! ゆるじでぇぇ! ゆるじでくだざぃぃぃ!」


 とめどなく溢れる謝罪と懇願。

 正義の妖精は倒すべき悪に、心が折れ屈服してしまったことを半狂乱で伝えてしまっている。

 そこに正義のプライドなどというものは微塵もない。

 さらに上乗せする快楽がどんどん蓄積し、球に集まっていく。

 ルクスルナが快楽に悶え、絶頂すればするほどに球の威力は高まっていく。


「あぎぎぎぎぎぎ!! だずげで、だずげでぇぇぇ!! ひぎぎぃぃぃぃぃぃ!」


 初めから装光妖精1人を壊すに足る快楽を受け、さらには自身のイキ様さえ加虐に追加されていく。

 ルクスルナが勝てる道理も、そして殺人的な快楽の暴力に耐えられる道理など、ひとつもなかった。

 暴虐の快楽玉が、正義の妖精をイキ壊していく。


「あがががぁぁぁ!! ひぎゃぎゃぎゃああああああああああ!!」


 ルクスルナの瞳は見開いているはずなのに、視界は激しい白以外なにも映らない。

 感覚はもはや過剰という言葉を遥かに通り過ぎた”気持ちいい”の暴力に支配される。

 シェイが快楽球に集中したからか、氷はすでに溶けていた。

 しかしそれによって、快楽でゆがめられた脳信号を受け取る体は全身で暴れ狂う。

 指先は不規則に前後し、手足はバタバタともがく。

 首は限界まで反らされて、浮いた腰と合わせてほぼ180度のブリッジをしていた。

 涙や汗、涎や愛液、小便といった液体も、当然限界などないかのように垂れ流されていた。

 ルクスルナの身体は、快楽球により与えられる地獄の業火のような性感に為すがまま操られていた。


「あがががががが、あぎぃぃぃ、うぁぁぁ、あぁ」


 やがて、ルクスルナの悲鳴は小さくなっていった。

 身体の動きも、受信した信号さえこなせなくなり、徐々に徐々に小さくなっていく。


「ぎ……あ……」


 やがて脳信号を受け取らなくなった体は、パタリと痙攣さえやめてしまった。


「あ。ルナ。壊れちゃった」


 ぽつりとシェイは呟いた。

 寂しげな言葉はただ、玩具が壊れたから呟かれた言葉。そこに愛など本当はない。

 彼女が欲しかったのは自分の思い通りにイキ続ける人形でしかなかったのだから。


 ぴしりと、ルクスルナの胸の青いクリスタルに亀裂が走る。

 亀裂は瞬く間に広がり、端までたどり着くと分かれてクリスタルを粉々に砕いた。

 手を頭上に投げ出して足をM字で開き、虚ろな目で宙を見つめるそれは、ルクスルナと呼ばれた者の残骸。

 この闇の空間でまた装光妖精が1人、破壊されたのだ。


「ルナ。楽しかったよ。じゃあね……。?」


 なにかがこの空間に近づいてくる。

 そのなにかは忌々しい光を纏っている。

 バリン、と闇の一部が砕けた。


「優ちゃん!」


 その砕けた闇の一部から出てきたのは、白地に青襟、赤いスカーフタイセーラー服コスチュームでオレンジショートヘアの少女だった。

 そのコスチュームにはルクスルナと同じく光が流れ、彼女のものはオレンジ色をしている。

 

「ソルライト」


 シェイは乱入してきた少女を知っていた。

 そう、ソルライトと呼ばれた彼女こそがこの闇の空間で一度は壊され、しかし勝利を収めた装光妖精なのだ。


「優ちゃん! 優ちゃん!」


 ソルライトはルクスルナに駆け寄り、その体を抱きしめる。

 そして、涙をこぼして口づけをした。


「なにを」


 ソルライトの行為。それはただ愛を示すだけの行為ではない。

 ソルライトのオレンジの光が、ルクスルナへと集まっていく。

 やがて、光は輝きを増して、柱と化した。


「これ、シャドウの時と……!」


 ソルライトは先の戦いにおいてルクスルナから力を受け取ることでパワーアップを果たした。

 今回はその逆だ。

 柱は収束し、ルクスルナという少女の形を取り戻す。

 そして収束したオレンジと青の光は激しく輝き、ルクスルナを照らした。


「あさひ」

「優ちゃん!」


 意識を取り戻して輝くルクスルナに、ソルライトはぱっと太陽のような笑顔を浮かべた。

 そんなソルライトに微笑み、ルクスルナはシェイに向き直った。


「これが、本当の愛です」

「意味わかんない。壊れた玩具は、蘇らないで!」


 シェイはもはやルクスルナに興味を失っていた。

 ならばもう、ルクスルナに負ける道理はない。

 歪んだ愛さえ持たないものに、真実の愛は決して負けないのだから。


「イクリプス・セイバー」


 ルクスルナは腰の鞘から光剣の柄を引き抜く。

 その刀身の光は、太陽光のオレンジと月光の青を宿していた。


「このぉぉぉ!!」


 怒り狂ったシェイがルクスルナに迫る。

 ルクスルナはただ、愛なき化け物を、両断した。


「ル……ナァ……」


 静かな断末魔をあげて霧散するシェイ。

 その消滅と同時に闇が消えていく。




「よかった。今度はわたしが駆け付けられた」

「ありがとうございます。ソル。私の……一番大切な人」


 今度はルクスルナの、望月優の方から唇を重ねた。

 望月優の一番大切な人は、彼女をそっと抱きしめ返した。

 なぜなら日之宮あさひにとっても、望月優は一番大切な人なのだから。


 月は二人の少女を優しく照らした。


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