降神姫アグニ14話 蠟燭と鞭
――どうしたんだ、はなび。らしくないじゃないか?――
「うう、ごめん。ホラー苦手なのよ」
――はなびは怖いものしらずだと思っていたがな――
「ホラーは別枠! でも、怖がってばかりもいられないよね……」
ボウッ、とその空間に灯りが灯る。
蝋燭が浮いている。
どうやらあれも魔物のようだ。
「まだ怖いけど、やるわ」
――その意気だ――
蝋燭魔物が、はなびにその火をぶつけるために迫る。
「ふっ!」
迫る蝋燭の先端を槍の穂先が霞めることでその火を鎮火。
はなびの槍捌きも確実に達人の域に達していた。
「よし、このまま一気に!」
ばしぃ!
「あああああああ!?」
蠟燭魔物を殲滅しようと動き出したはなびの背後から叩きつけるような衝撃。
それは、文字通り鞭だった。
「それ、幽霊なの!?」
疑問もあるが、なかなか厄介な布陣なことには変わりない。
ひゅんっと風切り音を立てての鞭の素早い攻撃。
注意のそれたところを蝋燭が迫る。
そして。
「あづああああああああああ!!」
蝋燭の一角がはなびの背中についに接触してしまった。
火の降神姫といえど、はなび自体は人間。
燃え盛る火を身体に浴びせられれば灼けるような苦痛が伴う。
そこにさらなる鞭うち。
「いだぁぁぁぁぁぁ!!」
鞭打ちの激しい痛みがはなびを襲う。
それも一度ではない。何度も、何度も鞭がはなびの背中を叩きつける。
「うぁっ、いだっ! あぅう!!」
そして鞭打ちの衝撃で振動する背中では、蠟燭の蠟がとけだして、じゅっ、とはなびの身を焦がす。
それはまるで拷問のようだった。
ぱぁん、とまた鞭が乾いた音を立ててはなびの身を穿つ。
「うあああああああああ!!」
そのたびはなびの口から身が削られたかのような絶叫が漏れ出る。
「はっ、はっ……」
苦悶の顔を浮かべるはなび。
しかし彼女の口角が、にやりと吊り上がった。
「反撃開始よ」
鞭の一撃。
しかしそれは盛大に空を切る。
そして次の瞬間には鞭は根本から切り裂かれていた。
「なんで、力の回復にあんなしんどい思いしなきゃいけないのかってのは置いといて」
はなびが槍を構える。
ボディスーツのエネルギーラインの赤い輝きは平常時よりも増していた。
火の降神姫であるアグニは、炎系の攻撃を受ければエネルギーが回復するのだ。
そのエネルギーを身体能力に変えて、はなびが舞う。
瞬く間に蝋燭魔物たちは鎮火されていった。
「はなびー」
「みなも! あー、あの、ごめん」
「うん、帰ったらおせっきょー」
「はい……」
合流してきたみなもとの会話では珍しくはなびが怒られ役だった。
コメント
コメントを投稿